【改正相続法⑨】預貯金払戻制度は先月以前に開始した相続についても全件スタートしています【注意】


前回の記事でご案内できていませんでしたが、重要な点ですので、注意喚起のため、記事をアップしておきます。

遺産分割前の預貯金払戻し制度(民法909条の2)の経過措置についてです。

原則 旧法主義(相続開始時を基準)

先日7/1に施行された改正相続法の諸規定は、原則として、令和元年7月1日以降に死亡した相続に適用があり、それ以前の令和元年6月30日までに被相続人が死亡した相続には、以前の旧法が適用されます。

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【改正相続法⑧】遺産分割の見直し3【分割前の遺産処分、預貯金払戻し】

本日は、令和元年7月1日、改正相続法の原則施行日です。

前回記事から更新が空いてしまいましたが、使途不明金訴訟などでも関連してくる遺産分割前の遺産の処分等に関する新たなルールをご紹介します。

遺産分割の対象となる「遺産」の要件
現在(分割時)も存在すること

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【改正相続法⑦】遺産分割の見直し2【持戻し免除の意思表示推定と「相続させる」遺言など】

前回に引き続き、「持戻し免除の意思表示推定の規定」について、実務上問題になり得る点を何点か挙げてご紹介したいと思います。 
 

<Summary> 
1 具体的相続分を求める計算式
具体的相続分=(相続開始時に有した財産の価額+生前贈与の価額-寄与分)×(当該相続人の相続分の割合)-(特別受益の額)+(当該相続人の寄与分)

2 遺産分割における取得額の算出 
遺産分割における取得額=(遺産分割における対象財産の価額)×(当該相続人の具体的相続分)/(全相続人の具体的相続分の総和)

改正法施行前の解釈論であり、これから事例が集積されていくところですので、あくまでも想定事例の解釈論として、ご参考程度にしてください。

【その1】「居住用建物」? 店舗兼住宅の場合 

遺贈・生前贈与された不動産が、店舗兼住宅のような場合にも、903Ⅳ(持戻し免除の意思表示推定)の適用があるか?「居住の用に供する建物」に該当するか?という問題です。 

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【改正相続法⑥】遺産分割の見直し1【持戻し免除の意思表示推定】

10連休で更新がしばらく空いてしまいました。 
皆様いかがお過ごしでしたか?(私は、国生みの島・淡路島で令和を迎えました。 )

万博記念公園内の湖畔にて


さて、今回は、遺産分割についてどのようなルールの変更があったのか、ポイントを押さえていきます。

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ゴールデンウィーク期間中の休業のご案内

平素は格別のお引き立てにあずかり、厚くお礼申し上げます。
明日からの平成最後のゴールデンウィークですが、当事務所では、以下の期間を休業とさせていただきます。

◆休業期間◆
2019年4月27日(土)~2019年5月6日(月)

◆お問い合わせ対応◆
上記期間中、お電話での対応はお休みさせて頂いております。
なお、メールや、お問合せフォーム(https://yuzurihalaw.jp/sent-form/)経由でのご連絡・お問合せを頂きましたら、お休み中でも確認してご返信・ご連絡させて頂きますので、お気軽にお問合せ下さい。

ご不便をおかけしますが、よろしくお願いいたします。

【改正相続法⑤】遺留分を侵害する不動産贈与ケースの事件処理/要注意の消滅時効【新旧対比】


今回は、不動産について遺留分を侵害する生前贈与・遺贈があった場合に、遺留分権利者は誰にどのような権利の主張ができるのか、また、消滅時効について債権法改正との絡みで注意すべき点は何か、いずれも旧法と新法との対比の観点からご紹介します。 

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【改正相続法④】遺産分割がからむ場合の遺留分侵害額の計算方法の統一【具体的相続分説】


<Summary> 
1 遺留分侵害額の算定方法 

遺留分=A【遺留分を算定するための財産の価額】×1/2×(法定相続分)
遺留分侵害額=(遺留分)-(特別受益の額) 
      -B【遺産分割において取得するべき財産の価額】 
      +(相続によって負担する債務の額) 
2  A【遺留分を算定するための財産の価額】
=(相続開始時において残っているプラスの遺産)
 +(相続人に対する生前贈与の額)※原則10年以内
 +(第三者に対する生前贈与の額)※原則1年以内
 -(債務全額)
3 B【遺産分割において取得するべき財産の価額】
遺産分割未了でも具体的相続分に応じて遺留分権利者が取得するべき財産の価額をいう
4 複数の侵害行為がある場合の順序 
・遺贈と生前贈与がある場合には遺贈が先に対象
・複数の遺贈、複数の生前贈与がそれぞれある場合には、目的物の価額に応じて
5 権利行使期間と金銭債権の時効期間
・侵害額不明でも相続開始&侵害事実を知ってから1年以内に権利行使が必要
・具体的金銭債権としては5年の消滅時効 

前回は、遺留分侵害額算定のうち、上記A【遺留分を算定するための財産の価額】についての新法における計算方法をご紹介しました。 

今回は、上記B【遺産分割において取得するべき財産の価額】について新法の下での計算方法や注意点をご紹介します。

遺産分割がからむ遺留分侵害額の計算方法

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【改正相続法③】相続人への生前贈与と遺留分侵害額算定の変更点、今後予想される紛争類型【新旧対比】


<Summary> 
1 遺留分侵害額の算定方法 

遺留分=A【遺留分を算定するための財産の価額】×1/2×(法定相続分)
遺留分侵害額=(遺留分)-(特別受益の額) 
      -B【遺産分割において取得するべき財産の価額】 
      +(相続によって負担する債務の額) 
2  A【遺留分を算定するための財産の価額】
=(相続開始時において残っているプラスの遺産)
 +(相続人に対する生前贈与の額)※原則10年以内
 +(第三者に対する生前贈与の額)※原則1年以内
 -(債務全額)
3 B【遺産分割において取得するべき財産の価額】
遺産分割未了でも具体的相続分に応じて遺留分権利者が取得するべき財産の価額をいう
4 複数の侵害行為がある場合の順序 
・遺贈と生前贈与がある場合には遺贈が先に対象
・複数の遺贈、複数の生前贈与がそれぞれある場合には、目的物の価額に応じて
5 権利行使期間と金銭債権の時効期間
・侵害額不明でも相続開始&侵害事実を知ってから1年以内に権利行使が必要
・具体的金銭債権としては5年の消滅時効 

遺留分侵害額の算定方法 

本記事では、主に遺留分侵害額の計算方法と、改正相続法により新たに生じることが想定される紛争類型のご紹介をいたします。 
旧法と新法とで結論が変わりうる事例(上記A、Bの算定方法)でご説明致します。

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【改正相続法②】改正のポイントと実務への影響2【事業承継と遺留分制度】

<Summary> 
遺留分「減殺」請求権が廃止されたことで
事業承継を進める上での障害が一つ解消された

事業承継の重要性

我が国の経済を支える中小企業の大半は同族会社であり、中小企業の経営者が高齢化していく中で、次世代に円滑に事業を承継して代替わりを果たすことは、当該企業を取り巻く取引先・従業員・株主等、社内外の利害関係者にとって重要なだけでなく、我が国の経済の発展それ自体にとって極めて重要なテーマです。

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【改正相続法①】改正のポイントと実務への影響1【総論】

改正相続法 待ったなし!

明治29年(1896年)に制定されて以来、約120年間ほとんど改正されてこなかった民法の債権法(契約・取引関係)が大幅に改正され、令和2年(2020年)4月1日から施行されることは、ニュースでも度々取り上げられていますし、法曹関係者でなくともご存知の方も多いと思います。

債権法改正が「明治の民法制定以来の大改正」とインパクトが大きいこともあり、その陰に隠れてしまっていたように思われるのが、「相続法の改正」です。

債権法改正も、時効期間の短縮をはじめとして実務に及ぼす影響は大きく当然重要ですが、実は、今回の相続法改正は、従前の制度を大きく変更し、また全く新しい制度を創設していて、通常の遺言・相続事案や遺産分割事案だけでなく、企業活動・事業承継の分野にも影響を及ぼす実務上のインパクトが非常に大きいところです。

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